ジョブズのシンプル思考は禅の思想から

ジョブズが公私ともに究極的にシンプルを目指したのは禅の影響からだ。

スティーブ・ジョブズのシンプル思考と禅の思想
 カウンターカルチャーが全盛を迎えた1960年代から70年代前半、若者たちは物質万能主義に疑念を抱き、精神世界に関心を向けた。ジョブズも、72年に 大学に入ると東洋思想に傾倒していく。なかでも仏教や禅には強い影響を受けた。後年彼が語ったところによれば、「抽象的思考や論理的分析よりも直感的な理解や意識のほうが重要だと、このころに気づいたんだ」(ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズI』講談社)という。

すっかり禅に魅せられたジョブズは毎日のように乙川師のもとに通い、2~3カ月に1回は禅堂にこもって瞑想する静修を行うなど、できるかぎり師と長い時間をすごすようになった。創業後多忙をきわめてからもことあるごとに教えを求めたという。

禅は宗派によって、坐禅だけではなく、念仏を唱えたり、問答を行ったりもする。だが道元は坐禅にすべてを集約した。道元の禅を学んだジョブズが「集中とシンプルさ」を信条としたのは当然だろう。
ところで、禅が目指すものは一体なにか。
それは簡単にまとめると「一度どうしようもないくらい複雑化したものが不要なものを削ぎ落とし、本来の純粋で単純で美しい直感の世界に戻ってくる」ということ。
禅問答の「犬に仏性はあるか」という質問に通じる。
禅では一度、複雑化しなくては悟りを得られないとされている。
ということは複雑化することが永遠にない犬には仏性はないのだ。
ところが犬は仏性に最も近い場所にいる。
それは人間の胎児と同じ、「液性中枢情報システム」と呼ばれる状態。イルカとかも同じ知能システム。「分かれていない」ため混ざり溶け合う事で瞬時に中枢まで情報が伝達される状態の事。禅の問いはこの状態を人工的に作り出すためのもの。
一度すべてを分けて、この世をわかったつもりになったもの(抽象的思考や論理的分析を得意とするもの)が、この状態(直感的な理解や意識)に目覚めること、これを悟りという。 
6/06/2014
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